2007年07月06日

贔屓な漫画の話なんぞを。 センゴク

全国津々浦々に生息する長宗我部元親スキーにとっては目の敵であり
総スカンを喰らっている男、仙石秀久が主人公な漫画。

センゴク : 宮下英樹 : 講談社
紹介サイト http://www.sunrise-pub.co.jp/duet/93/93.htm

長宗我部も仙石も戦国時代のマイナーメジャーな武将(大名)である。


○主人公の荒筋
仙石秀久は豊臣秀吉の古参部下であり、
秀吉が立身すると共に仙石も軍功を重ね立身していった。
が、秀吉の九州征伐の際に高ころびにあおのけに転んだ。

秀吉は、軍門に下った長宗我部ら四国勢を九州征伐に動員し、
その軍監に仙石秀久を任命した。晴れ舞台である。

ところが仙石は"攻撃は控えて本隊を待て"との秀吉の指示を無視して
味方城支援の出兵を強行したのだがこれに大失敗。
結果、四国勢軍団は壊滅。
長宗我部家は元親の嫡男信親を含む多くの家臣を失い、
後の長宗我部家内紛と滅亡の端緒となっている。

仙石はというと、戦場からとっとと脱出した挙句に
四国の自領に逃げ帰ってしまった。
完全試合を目論んでいた秀吉はこの仙石の暴走と失態に激怒、
領地を取り上げて追放してしまう。

そんな仙石だが、後の小田原征伐にて身体に無数の鈴を付けた目立つ格好で参戦し、
抜群の戦功をもって帰参を許されて大名に返り咲いている。

その後、仙石は徳川派に乗り換えて身代を保ち、信濃小諸藩の初代藩主となった。
ちなみに天下分け目の折に西軍についた嫡男秀範を勘当している。


○センゴク
漫画センゴクのキャッチフレーズは「最も失敗し、挽回した男」。
素敵なおっさんやら無様なおっさんやら
おっさんばかりが出てくる素敵な作品だ。

主人公は上のような経緯の持ち主なので、
四国の雄・長宗我部元親ファンからは蛇蝎の如く嫌われている。
かく言う私も信長の野望・全国版をプレイして以来の長宗我部元親スキー。
だから功を焦った挙句に卑怯未練な振る舞いを晒した仙石は大嫌いで、
戦国ゲームでは良く斬首にしていた。

そんな微妙な男を何故また漫画の主人公なぜに選んだのやら、と考えてみると
以外にこの仙石秀久という男を描くと戦国時代その物をを描けることに気づいた。
よくぞ焦点を当てたものだ。

仙石は秀吉に従っていたので、
美濃取り時代の信長・秀吉という織豊時代の黎明から、
小田原征伐以降の天下布武までの主要な合戦・政権中枢の様相に絡めて描くことができるのだ。。
更には関が原徳川秀忠軍に従軍していたので、真田昌幸も出てくる。

仙石秀久を描けば、戦国の模様や中央政権の移り変わる様、
主な武将全てを描くことが出来るわけだ。
コロンブスの卵?


○中身
戦国時代の事件、人物について、独自の解釈をもって描かれており、
かなりの練りこみ具合が伺える。最初、原作付きの漫画かと思ったぐらいだ。

特に人物描写が巧みであり、性格や容姿についてはかなりデフォルメされているが
妙に説得力がある。
コマの合間にチョクチョク史料からの抜粋を盛り込んでいる辺りがコツなのだろう。

もちろんこの漫画は史実を元にしたフィクションであるが、
この漫画は色々と読者の想像の幅を広げてくれる。
読みながら、ただ受け手になるのではなく、
脳味噌を能動的に動かすことが出来るのだ。だからボリュームがある。

絵も汗臭く泥臭くて味わい深い。
ただ、登場する女性にはあまり魅力が感じられない。戦国物の宿命か。


○史実の仙石秀久像
主人公の性格は猪。評価の難しい人物のようだ。
軍功も目立つが、四国戦や九州戦での失敗も目立っている。
領民への過剰な課役のために一郡逃散も招いている。

何故こんな人物が大名にまで出世できたのか不思議だったのだが、
漫画を読んでみるとなんとなく腑に落ちた。

手元や中枢にいないと困る人物ではないが、
先陣を任せるというよりは火蓋を切らせるに充分であり、
且つ勿体無くない程度な人物。
使い勝手が悪いようでありながら良い、一家に一人欲しい人物のように見えてきた。
また、史実においても不利な状況下において、無謀に突っ込んだりとっとと逃げ出したりしており
思慮の浅い馬鹿正直な人物であったようだ。

失敗したのも、一皮向けさせようと秀吉が一軍の軍監を任せたが、
そこまでの器ではなかったと。
その失敗も、諫めを聞き入れずに味方城救援をゴリ押しした結果だ。


その処世を見るにつけては、
決して善人でも正直でも情に厚いわけでもなく、だが腹に含む物が無い。
秀吉あたりは確かに可愛がりそうだ。
まあ、秀吉とは会ったことも無いのでもちろん想像でしかないが。


さて、秀忠や真田家がどのような人物として描写されるのかが
今から非常に楽しみで溜まらないのだが。

ただ、関が原の合戦まで連載が続くのか、それが問題だ。
悲しいかな、この漫画の魅力でもある歴史の独自の解釈は、
ある程度スタンダードに戦国時代を知らないと中々味わいきれないだろう。
それでいて漫画も読む人でなければ購入しない、
そんな間口の狭さがある。

だがその面白さは格別だ。
間口なんぞはそこそこ狭いほうが尖がっていて面白くなるものだ。
センゴク(1)

「信盛?ああ、退き佐久間ね」
「長宗我部元親?一領具足って痺れるよね」
という人には一も二も無くお勧めできるこの作品が好き。
タグ:漫画 戦国


posted by 塗りかべ at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) |
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